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夫のモラハラに気づいていますか?
困ったモラハラ夫の傾向と対策



夫唱婦随(ふしょうふずい)という古い言葉があります。夫が言い出したことには妻は従うという意味で、仲のよい夫婦に使われてきましたが、男女の平等や多様性が見直されている近年はどうでしょう。そんな言葉は初耳だと言う方も多いのではないでしょうか。ましてや夫が誤った主張をしたり、ひどい態度を取る場合、黙って見逃してはいられませんよね。

私が取り組む日々の業務でも、目立って多いのが夫のモラハラ行為による離婚相談です。ことにコロナ禍においてはご想像のとおりで、この“モラハラ夫”が増加傾向にあります。
しかし最近よく聞くものの、ひと口にモラハラといっても多種多様で「よくわからない」というお声も多いようです。
そこで今回は、夫のモラハラ行為についてお話したいと思います。


モラハラって一体なに?

そもそも、モラハラというのは「モラルハラスメント」の略語です。よく似た言葉で有名なのはセクハラですね。これはセクシャル・ハラスメントの略語で、意味は性的嫌がらせ。同様にパワハラはパワー・ハラスメントの略語で、地位や立場を利用した嫌がらせを意味します。

では、モラハラは? 直訳すればモラル(=道徳や倫理)上のハラスメント(=嫌がらせ)を意味します。
わかりやすく言えば「人として守るべきルールに反した非道ななすりつけ行為」とでもいうことになるでしょうか。実際は主に精神的な嫌がらせであり、いじめに近いとも言われます。

パワハラとの違いは?

セクハラはわいせつな行為や表現を用いた性的な嫌がらせですから、その時点でモラハラとの違いは明確ですが、パワハラはどうでしょうか。

パワハラもモラハラも、いじめや嫌がらせ行為を介して受けやすいハラスメントという点では同じです。しかし、パワハラは職場の上司や先輩など、権力や地位・能力などの力の差を利用した威圧的なハラスメントであるのに対し、モラハラには力関係や上下関係を伴いません。

パワハラは相手が目上であることが多いため、簡単に言い返せないことでフラストレーションがたまりますが、モラハラは立場が同等の相手に嫌がらせをされて精神的ダメージを受ける点に、両者の決定的な違いがあると言えます。その意味でも、夫から受ける嫌がらせの大部分はまさにモラハラの典型なのです。

こんな夫はモラハラ夫だ



ではいったい、夫のどのような行為がモラハラと言えるのでしょうか。
モラハラ行為をはたらく夫は、妻に暴言を吐くにとどまらず、人格を否定し人前でも平気にバカにしたりします。

常に自分が優位で上の立場と考える傾向が強いですから、育児や家事に協力しません。さらには相手の言い分を聞こうとせず、自分の価値観を押し付けてきます。こちらが何か失敗しようものなら、その弱みにつけ込みいつまでもネチネチと責め続け、自分の失敗に言及された場合は徹底して無視します。

自らの非は絶対に認めず、我慢ができないとイライラして物に当たったりします。何につけ束縛が強いのもモラハラ夫の特徴です。
以下に、モラハラ夫の具体例をあげてみましょう。

典型的モラハラ夫の具体例

・食事が気に入らないからと勝手に別の物を食べる。
・家事や育児を一方的に押し付けて協力しない。
・片づけ忘れていた箇所等を指摘しては皮肉や嫌味を言う。
・目の前で当てつけがましく舌打ちしたりため息をつく。
・自らの出費に甘い反面、買った物を厳しくチェックされる。
・友人などとの外出を認めず、常にどこにいるのか定時連絡させる。
・自分の実家には休みのたびに帰る反面、こちらの実家には寄り付かない。
・毎月の生活費(婚姻費用)を入れない。
・思い通りにいかないとすぐに不機嫌になる。
・屁理屈を重ねて問い詰めてくる。
・すぐにキレやすく、その後は無視する。
・大声で怒鳴る。
・恫喝や叱責のすべてを「お前のせいだ」と責任転嫁してくる。
・大きな音を立ててドアを閉める、床を激しく踏みつける。
・人前でも平気で(妻の)人格否定をする。

さらに、以下のような言動があれば、それだけで立派なモラハラ行為です。

・「誰のおかげで生活できてるんだ」
・「子育てしかしてないくせに」
・「しょせん高卒のくせに」
・「お前はバカだ」
・「お前だってそうだろうが」
・「俺の言うことを聞かないからだ」
・「絶対にお前が間違っている」


夫のモラハラを見過ごしていませんか?



コロナ禍の外出自粛要請に伴い、困ったモラハラ夫による被害が増える傾向にある一方で、日頃の夫のモラハラ行為に慣れ過ぎ、モラハラに気づけなくなっている方もよく見かけます。
次のような事項に該当する人は、夫のモラハラ行為に麻痺してしまっていて、ひどい場合はすでに何らかの精神上のトラブルを抱えている可能性すらありますから、念のためチェックしてみてください。

・常に自分に責任があるのではないかと自問してしまう。
・常に夫の顔色や機嫌を伺っている。
・夫が帰宅した物音を聞くと動悸がする。
・夫の機嫌が悪いと、自分が謝って済ませようとする。
・電話の着信音が鳴るたびに夫に怒られると思ってしまう。
・夫の言動を思い出すだけで体調に何らかの支障が出る。
・独身時代に比べ、自ら性格が暗くなったと感じる。

モラハラは刑事上の犯罪に当たる場合も!?

刑法231条では「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。」と定められていて、これは法定刑の侮辱罪に当たります。条文にある「公然と」とは、不特定または多数人が知ることができる状態にあることと解釈されています。

したがって、家庭内での口論はさておき、「お前はバカだ」などのモラハラに当たる言動を公共の場、つまり複数以上の客のいる飲食店やネット上などで行った場合には、侮辱罪になりうる可能性が高いということです。
ただし、正式に侮辱罪として成立するには、暴言を吐かれた妻本人が告訴する必要があります。


モラハラの成り立ちと傾向

モラハラの成り立ち

モラハラという言葉自体は最近のものですが、その行動原理については実に根深いものがあります。日本には古くから家長制度があり、家長は長男が基本とされてきました。そのため、長きに渡り男尊女卑の形が根づき、女性は社会的な地位を獲得できず、結婚すれば家庭に入るという性別による役割分担を強いられてきました。その後、時代とともに女性の社会進出は進んでこそきましたが、かつての家族の形や風習は未だ根強く残っています。

例えば、とても身近なところでは、長年放送されているTV番組がわかりやすいと思います。家族がテーマのアニメに登場する女性たちはこぞって専業主婦ですし、先日久しぶりに観たドリフ番組では、早い帰宅を約束した夫が酔っ払っていることを注意されると「うるさい」、「ばかやろう」などとふらついて暴言を吐き、家族や妻を壁にぶん投げます。

これらはあくまでも、アニメやお笑い番組のなかでの話ではありますが、”男性が外で働き、女性が家庭に入る”、”夫が酒に酔い潰れて妻が介抱する”というシーンが、よくある標準的な家族のカタチとして表現されてきました。私自身幼い頃から、それをよくある家族の姿として見ていたように記憶しています。今の子供たちのままごとにも、お父さんはお仕事、お母さんは子育てと家事というスタイルのものをよく見かけますし、一般的に女性は、未だに結婚相手が「長男」かどうかということを気にしたりしますよね。

このような男女のあり方は、今も多くの国民に深く根ざしていて、無意識のうちに男女間にあるべき前提として考えてしまっている部分があります。夫は家長として振る舞い、妻はそれを支え甘受する。このことが時として、男性を横暴化させる引き金になっているのです。つまり、モラハラをはたらく“モラハラ夫”は、この連綿と続いてきた日本社会の成り立ちそのものなのです。

男性は身勝手な言動や横暴な振る舞いを受け入れるよう妻や恋人に強要し、良き妻・良き恋人を目指す女性はそれを許容しようと最大限の努力をする。そのような状況下では、男性が自身の行動を顧みることはなく、自分は「普通」、「正しい」、「女性が悪い」という物差しをどんどん肥大化させ、まさにモラハラモンスター化していきます。このようにして、モラハラ夫は、古き日本社会の家族風習を土台として、現代社会に広く蔓延してしまったと考えられるのです。

モラハラ夫の傾向

もちろん、すべての男性がモラハラをはたらくわけではありませんが、上で述べたとおり、その素養は日本社会のなかで培われてきたものです。それを肥大化させる次のような傾向により、モラハラ行為をはたらく「モラハラ夫」になりやすいのではないかと思われます。
あなたの夫に、次にあげるような傾向が該当するようであれば注意が必要です。

(1)優しい時と厳しい時の差が激しい
妻が自分の言うことを聞くときは過剰なほどの愛情を注ぎ、一方で反発した時には長期間無視する、話を聞かないなど、当たりの強い対応を取る場合などは非常にわかりやすい傾向です。すなわち、妻には常に自分に従って欲しいという感情の現れであり、対等な関係などそこには存在しません。

(2)妻や恋人にライバル意識を持っている
妻や恋人の年収や学歴が自分よりも高いということをライバル視する男性もそうです。それで自分も頑張ろうというのであれば別ですが、すねてしまったり機嫌を悪くしてしまう男性も、本質的に女性を対等な立場として捉えていない証拠です。よく努力したんだね、すごいねと声をかけられない男性には要注意です。

(3)夫の家庭環境
男性側の両親の家族関係も非常に重要です。義理の両親との関係はより注視する必要があります。夫は自身の育った家庭環境を当然と考え、それを前提とした家族形成を期待しがちだからです。義母と夫との関係についてはとくに注意してください。過剰な愛情をかけ、義母が必要以上に夫に甘いような関係であれば、夫は妻に対しても同様の振る舞いを求めるケースが多く、妻を「自分のために働く人」という立ち位置に決めつける可能性が高いです。

(4)何らかのコンプレックスを抱えている
コンプレックスは精神分析学で「心理的複合」を意味するものですが、和製英語としては学歴コンプレックスの場合には劣等感や自信欠如、マザーコンプレックスの場合には性愛を感じるほどの強い愛情・愛着・執着と解釈できます。
一般にコンプレックスが強いと、たとえば友人の出世話を「どうせコネだろう」といぶかったり、結婚や出産などの話にも「低レベルな相手を見つけたんだろう」などと、他人の幸せを受け入れらません。
このような夫はモラハラ行為に及ぶ可能性が高いと言えます。

(5)仕事や日常生活でストレスをためている
夫が責任の重いポストに就いている、稼業の経営に苦しんでいるなど、仕事で強いストレスをためている場合、それを妻にモラハラという形でぶつけてしまうケースは珍しくありません。
ことに、家庭環境や職場環境がこれまでと一変したコロナ禍の場合においては、さらにストレスが強くなりますから、モラハラの危険性を増大させると言われています。

(6)店員に傲慢かつ横柄な態度を取る
モラハラ傾向が強いと、自分より下の立場の相手を徹底的に攻撃しがちになります。飲食店や販売店などで店員に対し横柄な態度を取るのはその典型です。結婚相手を探すときには、自分や友人以外の第三者に対する態度をよく見るようにと聞いたことがありますが、これは案外的を射ています。他人に向ける態度は、将来愛情を無くした夫が妻に向ける態度であると思ったほうがいいのです。些細なことにでも猛烈にクレームをつけるような性格は、モラハラをはたらきやすい傾向が強いと思われます。



夫のモラハラに我慢できない場合は?



モラハラ行為は受けた被害そのものも卑劣で残忍極まりないものですが、その悲しさや悔しさを他人に理解してもらいにくいという点が、もう一つの大きな問題点だと思います。まずはモラハラの中身を知り、どのような言動がモラハラ行為に当たるのかを学習することが大切です。
しかしそれでも、実際にモラハラ被害を受けてしまったら、、、。さらには、度重なるモラハラ行為に我慢できず、離婚を考えているなら、、、。

ここで大切なことは、慌てないことです。調停や裁判などの手続きには証拠が必要になりますから、夫からモラハラを受けたことを立証できる証拠を揃えましょう。
モラハラ夫との離婚を考えるのであれば、裁判では民法が定めている「法定離婚事由」、もっと言えば「婚姻を継続し難い重大な事由」を証明しなければなりません。
具体的には、以下のような準備が望ましいと思います。

(1)LINEなどのデータを残しておく
SNS社会と呼ばれることもあるほど、近年はほとんどの人がスマートフォンやPCなどの端末を利用するようになり、LINEに代表されるSNSアプリは、利用者の日常生活に欠かせないツールになりつつあります。
ところが、そんなLINEでのなにげないやりとりの記録が、裁判で勝敗の決め手となった事案が少なくありません。
実は、日付や当事者さえ特定できれば、LINEなどのデータは裁判上の有力な証拠となるのです。モラハラ夫が「だからお前はバカなんだ」などとコメントを残した場合は、日付がわかるように表示させたうえで
スクリーンショットや画面メモを取っておくことが大切です。

(2)モラハラ発言を録音する
近年のスマートフォンは、ボタン一つで録音できるものがほとんどです。もし夫が日常的にモラハラに当たるような発言をするのなら、こっそりアプリを立ち上げて録音してしまいましょう。
録音データが決め手となり逮捕につながったというような新聞記事やテレビ報道は日常茶飯事になりましたが、裁判手続きでも例外ではなく、日時や当事者が特定できれば十分に有力な証拠として認められます。
もちろん、スマートフォンでなくても一般的なボイスレコーダーでも可能ですし、録画データも同様です。

(3)詳細にメモや日記に記録する
そうはいっても、受けたモラハラ行為のすべてを録音・録画で確保するのは困難です。そんなときは、覚えているうちに日記や手帳に記録しておきましょう。または、家族や友人・知人宛てで、夫に言われた内容を具体的に記したメールを送っておくのも有効です。これらの方法であれば、夫に隠れて記録することもできます。
相手から「信用できない」、「ねつ造だ」などと反論されるおそれはありますが、毎日のように詳しく記録していれば、後でねつ造したとは考えにくいとして信憑性が高まり、裁判で証拠に採用される可能性は高いです。このとき、モラハラに限らず日常の些細な出来事なども併せて記録しておくと、証拠としての有用性がさらに高まるでしょう。


ご相談ください

人生のパートナーである夫から受けるモラハラ行為は、時に精神に深刻なダメージをきたします。それはあなただけでは終わらず、子の教育面にも悪影響を及ぼします。夫のモラハラ行為から離婚に発展するケースも少なくありません。そのような場合にはお一人で悩まず、ぜひ専門家へのご相談をお勧めします。

夫からモラハラ行為を受けてお悩みの方、離婚をお考えの方、その他、夫のモラハラ問題について詳しく知りたい方はぜひ当事務所までご相談ください。  ​

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弁護士一津屋香織(ひとつやかおり) 天神法律税務事務所
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